「Getting Over It with Bennett Foddy」”人を傷つけるために作った”?!意思を前面に押し出したからこそ人気となった、注意喚起レベルの超高難易度ゲーム ー インディゲーム分析&紹介

ゲーム紹介

 「Getting Over It with Bennett Foddy」は、日本プレイヤー間で通称”壺おじ”としても親しまれている、物理演算を用いた登山プラットフォームゲームです。

 ゲームの内容の紹介の前に、Steamページを開いた際に真っ先に閲覧者の目や耳に入るように配慮された、作者のメッセージを紹介します。

このゲームについて

特定の人に向けて、
誕生した、ゲーム。

特定の人を、傷つけるために。

本作のSteamページより
https://store.steampowered.com/app/240720/Getting_Over_It_with_Bennett_Foddy/

 ゲームは、おじさんキャラクターが手に持ったハンマーをマウスで動かし、限られた手段で山の頂上を目指すという内容になっています。
ハンマーは先端が何かに引っ掛けられる形状をしているので引っ掛けてうまく登ったり、あるいはハンマーを地面に思いっきり押し付けることで飛び上がったりして先へ進むことができます。いずれにしても、ハンマーをどこかしらに当てなければまともに移動できません。
キャラクターには物理演算が用いられているので足を踏み外すとそのまま落下します。ハンマーが届きそうな距離に何もなければ、無情にも落下し続けるでしょう。

 ルール自体は非常にシンプルですが、本作は作者の言葉通り見た目以上に猛烈な高難易度でプレイヤーを圧倒し、その心を折っています。
実際にレビューにていくらか「おすすめしません」が見つかりますが、目を通すとそのほとんどが難易度に挫折したと見受けられる内容となっていることがわかります。

 一体なぜ、そんな低評価レビューが付くようなゲームが流行したのか。いや、ここまで来ると最早「難易度に挫折した低評価レビュー」でさえも、「本作の難易度の高さを証明する立派な評価」に転じているのでしょう。
さらに言うと、それらのレビューを加えたうえで全レビューで「非常に好評」となっています(8月28日時点)。
それを成し得ている理由は、作品のSteamページのデザインに大きくあると考えます。

Getting Over It with Bennett Foddy on Steam
A game I made for a certain kind of person. To hurt them.

 ページを開いた際に真っ先に閲覧者に入る情報がゲームの概要のほかに「人(※このゲームに挑戦する人)を傷つけるために作った」、つまり難易度が非常に高いゲームであるということと、それが作者から伝えたいメッセージであるということの2点になっています。
通常「人を傷つけるため」など作品の評価を下げる要因となるものです。しかし、前面に押し出すことで作品のテーマとして受け入れられ、良い評価に変わるのです。それは、作品を「おすすめ」しているレビューからも窺えます。彼らはこのテーマを承知の上で挑戦したプレイヤー達ですので、心が折れたとは言いつつも高評価を付けています。
後から作品に興味を持った人が、作品のインプレッションを持ち、そして全てのレビュー:「非常に好評」から信頼を持つ。(ここで信頼を得られなければ、作品ページの下部まで見てもらいにくくなります!) そして、前もって難しいゲームと知ったから、挫折による低評価レビューがあっても「本当に難しいゲームなのだろう」と頷ける。
これがもし、作品ページの最後のほうにそっと「人を傷つける可能性があります」などと添えてあったのなら、一変して低評価の多い作品となっていたかと思います。自信の無さから来るような保身的なひとことではなく、思いきり「私は自信を持ってこのゲームを作っています」という気持ちが伝わる構図が、挫折による低評価レビューさえも信頼できるレビューたらしめるのです。

 この高難易度を越えた時の達成感はもちろん素晴らしいものですが、達成できなかった人も高評価を付けている点から考えても、クリアできなくても十分楽しめるゲームだと思います。ただし、本当に高難易度なので承知したうえでプレイされることをおすすめします。

 作者が前面に押し出すほどの超高難易度プラットフォームゲーム、通称”壺おじ”こと「Getting Over It with Bennett Foddy」はBennett FoddyよりPC(Steam)やスマートフォン向けに配信中です。

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