[GDC 2021]パブリッシャーとの契約で気を付けるべき点について:Independent Games Summit

インディイベント情報

「Demystifying Indie Publishing Offers」
August Brown
Senior Producer
Armor Games Studios

パブリッシャーとの契約で気を付けるべき点について

これまでのキャリアのほとんどをパブリッシャーとして過ごしてきたAugust氏が、セッションの冒頭で繰り返し述べたのは、「パブリッシャーとの契約で、おおよその平均値、例えばレベニューシェアなら開発会社の取り分は80%~50%のどこかになる事が多いなどはあるが、パブリッシャー企業は数え切れないほどあり、その契約内容も契約の数だけ違っているから、サインの前には必ず専門家を雇おう」という事でした。

そして本題に入ります。
まず最も大切なのは、作品IPの所有権について。
もし持ちかけられた契約の中で、作品のタイトル名や制作物などを含むIPの所有権について「パブリッシャー側に譲渡する」という内容が含まれている場合は、強く警戒するべきと言います。
またさらに、シリーズとして次回作を出したりする場合はどうか、他にも例えばロゴを入れたグッズやサウンドトラックなどを作る場合はどうかなど、自分たちのIPに対する権利が確保されているかどうかを確認すべきです。
もちろん、他の条件などを十分に吟味した上で「この権利は譲渡する」と決めるのであれば問題ありません。

次に期間について。
1年単位での更新から半永久的という契約まであるが、基本的には短い方が望ましいと言います。双方ともに問題が無ければ、そのまま延長していく形であることが普通です。

そして契約違反や契約解除について。
例えばあらかじめ決めたマイルストーンについて、開発が間に合わず履行出来なかった場合にどうなるのか。最悪の場合、パブリッシャーが全てを奪う権利を持つというケースも無い事ではないので気をつけなければなりません。
通常は違反を告知されてからの猶予期間「Cure Periods」があるはずです。その辺りもしっかり専門家を入れて確認しておきましょう。

そしてまた犬が吠えている部分が要注意ポイント!
パブリッシャー側にのみ「いつでも契約を解除出来る」となっている場合があると言います。その場合には「それまでに受け取った金銭を返却しなければならない」となっていたりするこのような契約は絶対に避けなければなりません。
パブリッシャーは「念のために入れているだけです。これまで履行された事は一度もありませんよ」と言うかもしれませんが、こういった条文が入った契約を結ぶのは、常に生殺与奪の権利を握られたままでいるのと同じ事です。

そして、パブリッシャー側の責務について。
通常、契約書にはデベロッパー側の責務が書き連ねられます。しかしそれだけではフェアでは無いので、パブリッシャー側にもどういったプロモーション活動を行うのかなど、話し合いで決めた内容をしっかりと専門家の手も借りて記載しておきましょう。

パブリッシャーの権利について。
パブリッシャー側は通常その権利の内容を出来るだけ幅広く曖昧にしがちなので、対象となるプラットフォームやハードウェア、国など出来るだけ明確に記載しておくべきです。

そしてお金について。
色々なパターンがあるが、通常は「リクープ前」と呼ばれる開発中コストの回収段階と「リクープ後」の段階に分かれます。
一般的に言われる「レベニューシェア率」は、リクープ後の売上に対して「この割合で分配する」という事であり、だからリクープの対象となるコストが何を指すのかをしっかり確認しておく必要があると言います。
開発中にデベロッパーに支払われる費用やマーケティング予算、QAなどデバッグやクオリティチェックにどれだけ使うのか、そしてそれぞれがリクープの対象になるのかならないのか等。

そしてここでまた犬が吠える!
リクープ前に、パブリッシャー側はしっかりと分配金を取りながら、デベロッパー側だけが分配金の中からリクープの費用を差し引かれる契約になっている場合があるという事です。こうした契約は避けなければなりません。この辺りの条件も専門家を雇ってしっかり確認しておきましょう。

インディゲーム開発者にとって、パブリッシャー契約というイベントはそう頻繁にあるわけではないので、こうしたセッションは大変参考になりますね。

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