マーケティング考察 – 3か月の週間STEAMインディランキング(6/4~9/23)から見るランクイン作品の傾向~リリース日編~ ー インディゲーム分析

インディゲームランキング

 これまで当サイトにて、STEAMの全世界売上上位ページを元に独自のランキング付けを行い、上位のインディゲームを紹介してきました。
約3か月間、お気に入りのゲームや開発の参考になるゲームは見つかりましたか?

 indiegamesjapan事務局のランキング記事を見ていだだけるとわかりますが、何度もランキングに載っている名作(例:「Valheim」・「Phasmophobia」、皆勤賞)、そんな名作が集う中にもいきなり現れさらには上位を獲得した作品(例:「She Will Punish Them」、集計期間:7/9~7/15のランキングにて1位)と、我々ゲーム開発者としてもこれらのインディゲームから興味深い情報を読み取れます。
本記事では今までのランキングから窺える、インディゲーム市場の傾向や特徴をできる限りお伝えしようと思います!

 シミュレーションゲームなど、ランキングに多く見られやすいゲームジャンルこそあれど、1回のランクインで言うなら非常に多くのジャンルでチャンスがあることが窺えます。長い期間でランクインするにはPvPやCo-opといった「ユーザーがユーザーを呼ぶ構造」が必須と言えるでしょうが、しっかりと販売戦略を練ることで、それらが無くとも短期間でもランクインを狙えると信じています。
さらに、価格設定に目を通すとほとんどの作品が$10以上となっています。全14回の総計で被り含めて140回・被りを除いて55作のうち、$10未満のランクインは被り含めて12回・被りを除いて7作でした。価格戦略については下記記事などで詳しく触れているので参考にどうぞ。

 さて、ランキングの各作品がリリースされた日やランキング上位になったタイミングをみると、いくつか傾向が見えました。

・他のタイトルが下火になった(同時期に出ている他のビッグタイトルがない)ところに出す
 「Steamサマーセール」など、数多くの作品がこぞって大賑わいとなるタイミングがあります。当然それだけライバルとの市場争いも激しく、ユーザーも分散しやすくなります。
こうしたSteam公式のセール期間についてはユーザーも予め知っていることなので、Steam全体でのユーザー数はとても大きくなってます。この期間で一定以上の成功を収めることは非常に大きな功績と言えるでしょう。
「She Will Punish Them」はサマーセールに合わせて大型アップデートを行い、見事にランキング1位を獲得しました。サマーセールを狙っての入念な事前準備が優れていた賜物です。

 そんな多くの人が集まる公式セール期間ですが、通常Steamのセールは実施後はクールタイムがあり、頻繁に行うことはできません。ですので、ユーザー側は一旦セールを逃すとしばらくは通常価格でしか購入できなくなります。裏を返せば名作たちもセールの直後は『もうその作品は買っている』というユーザーが多いことになります。これらのユーザーもいつかは次の作品を探すときが来ます。ここで、購入済みの作品は自然に候補から外れることになります。その時にセールを行えば同時にセールを行っている作品(=ライバル)も少なく、ユーザーの目に付きやすいでしょう。実際に目を通してみると、サマーセール直後は新作のランクイン率が上がっていました。
さらに、非常に興味深いことですが、$10未満の作品の12回・7作のランクインは、ほとんどがサマーセール直後の期間に集中しています。同様にやや高額めの作品も見られます。今でこそランクイン回数が多い名作も、正式リリース日・アーリーアクセス開始日を見ると、ほとんどが「ある公式セール期間とその次の公式セール期間の隙間の日」でした。
このことから考えると、公式セール期間は大きな売り上げが見込めますが、ランキングに着目するならばその直後~次のセール期間前が狙い目ですね。

 ちなみに余談に近いですが、ゲームプレイ動画の投稿者(特に人気・有名といわれるチャンネル)は「自分がプレイする作品の動画を、同時期に他の人が投稿すること」を避ける場合があります。”あえて投稿(配信)を遅らせる”、”ほかの作品を探す”など対策は人によりますがいずれにしても今着目されている作品を避けて別のゲームを投稿する可能性があるということです。公式セール期間には名作が着目されるので、こうした動画投稿者という意外なルートからユーザーを獲得するチャンスが生まれます。
動画投稿者経由でユーザーが集まってくる場合、最低でも”投稿者がゲームを買う”→”動画を投稿(配信)”→”ユーザーが動画を視聴してゲームに興味を持つ”→”ゲームを買う”(→場合によっては”買ったユーザーから次のユーザーへ伝わる”)という過程を踏むので、ゲームが注目を浴びるのに早くて数時間~のラグが出ます。新作が公式セール期間から微妙にズレて人気となるのには、こうした一面もあると考えます。
どんな作品が動画にされるかはそれこそ予測が付きませんが、有名実況・配信者に取り上げられて売り上げが急増した作品も少なくはありません。

 また、ここで言う他のビッグタイトルとは、Steam以外の市場を含んでのものを指します。当サイトのランキング記事はSteamインディ作品のみを対象としており、これに当てはまらない、例えば大手企業の作品などは紹介を省いています。だからといってその動向を無視していると、世界の名だたる作品の陰に埋もれることになってしまいます。今月で言うと「Tales of ARISE」や「LOST JUDGMENT」が該当するでしょうか。大手企業タイトルはほぼ間違いなくリリース日が先行公開されるので常にアンテナを張っておきましょう。
Steamインディ市場で戦う上でも、それ以外のゲーム市場の流れまで把握していれば効果的なタイミングで売り出すことができます。

 「作品を知ってもらう」という観点では、リリース&ローンチセールのタイミングを考えるのは重要です。”軌道に乗るまで注目されやすいタイミングを狙い、大きな売り上げが見込めるようになったらセールで大きな実績を残す”。これも立派な戦略の1つだと思います。目的に合わせたマーケティング戦略を立てましょう!

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