以前「インディゲームとは?~第5回 国内同人ソフトの歴史~」の項で、日本国内ではアダルト分野を中心とした同人ダウンロード販売市場(同人市場)が拡大しているというお話をさせて頂きました。
海外で「HENTAI GAME」と称される日本のアダルトゲーム文化は、日本独自の強みであることは間違いありません。我々は、日本のアダルト同人ソフトが、その強みを活かしてSteamで売上を出すことが出来ると考えています。
本当に売上は出せるのか、販売のポイントや参入のハードルも踏まえて考えていきます。
・レビュー数から見るアダルト同人ソフトの強さ
■Steam国内アダルト同人ソフト
■Steam国内インディゲーム
この表は、インディジャンルの売上トップ上位に入っていた国内アダルト同人ソフト(左)と国内インディゲーム(右)のレビュー数をまとめた物です。(※インディゲームスジャパン調べ)
有名な『NEKOPARA』を始めとして、インディゲームに劣らない結果を出せていることが伺えます。表左右のタイトルで知名度の差を考えると、アダルト同人ソフトがいかに戦いやすく結果を出しやすい物かは、実際にリリースしたことがある開発者ならわかると思います。
参考に代表的な同人市場でのダウンロード数を横に並べています。興味深い事にダウンロード数に比例して、タイトルが売れているというわけではありません。ここにはSteamで販売するうえでのポイントが存在すると考えます。
今日Steamのインディジャンルの売上トップを見ても、アダルトゲームを見かける事は珍しくありません。国内アダルト同人ソフトは、Steamに進出し世界規模の売上を目指すことが出来るのです。
しかし、 同人市場の規模から考えると進出している数はまだまだ多くはありません。それはリリースまでのハードルにあると考えます。
上記、Steam販売でのポイントとリリースまでのハードルについて考えていきましょう。
・Steam販売でのポイント
後述するリリースのハードルの項で触れますが、Steamのアダルト規制は依然として強く、アダルト要素を前面に押し出して売ることは出来ません。
そのため、以下のポイントを重視したタイトルを用意する必要があります。
・ゲームとしての面白さ
RPGやアクション、シミュレーションなどゲーム性があると売れやすい傾向があります。
アダルト要素を省いても遊べるタイトルに出来るかどうかが重要です。
・アダルト要素を省いた場合のプレイ時間
Steamでは購入後14日以内であれば、プレイ時間が2時間以内の場合返金が可能です。
アダルト要素を省いた状態で2時間以上遊べないタイトルは返金されやすいため注意が必要です。
上記2点をクリア出来る場合、同人市場で評価をあまり得られなかったタイトルでも十分に戦えると考えます。
・リリースのハードル① 〜表現規制〜
Steamはここ数年であらゆる規制に関して寛容になってきました。アダルトに関しても寛容になったとされていますが、まだまだ規制は強く特に日本のアダルト要素は規制の対象になりやすいです。
以下の要素は特に規制対象になると言われています。
・陵辱などの過激な要素
・子供を連想させる物(幼児体型、セーラー服、スクール水着、体操服など)
Steamのアダルトゲームに、ファンタジー作品や私服を着たキャラクターのタイトルが多い理由はここにあります。また、具体的な性行為描写も規制の対象になることが多く、ほとんどの作品が非R18の状態で発売し、別サイトで販売・公開されているパッチを当てることでR18要素が開放される作りを取っています。パッチに対応した作りに変えることは工数が増えて大変ですが、一度審査に落ちてしまうと審査がより通りにくくなるため対応したほうが良いと言われています。
このような規制への対策がSteam進出へのハードルを上げている一因です。
・リリースのハードル② 〜翻訳〜
国内に同人市場がある以上、日本語のタイトルをSteamで販売しても意味がありません。最低でも英語と簡体字には対応する必要があり、ゲーム自体も各言語に対応させる必要があります。
・翻訳
翻訳は、専門の業者に頼むことも可能ですが費用が高くかかってしまいます。安く済ませたい場合は、ランサーズなどのフリーランスの方々に依頼する方法を取ることで費用を抑えることが出来ます。
・言語切替対応
言語切替機能を新規実装することが出来れば完璧ですが、実装コストがかかり開発と並行して行うことは難しいかもしれません。その場合は、Steam側で用意されている言語に応じたゲームファイルをダウンロードする機能を使い、それぞれの言語のビルドを用意するだけで解決することが出来ます。
・パブリッシャーを利用する
上記ハードルをどうしても超えられない場合、パブリッシャーと手を組んで解決する方法もあります。
すでに日本のアダルト同人ソフトをローカライズしてSteamに展開しているパブリッシャーは存在します。それらパブリッシャーは、デベロッパーからの提案を受け付けている所がほとんどです。
ローカライズやパッチ化まで行ってくれるため、問い合わせから相談をしてみるのも手でしょう。
・まとめ/今後の予想
リリースのハードルはあれど、日本のアダルト同人ソフトはSteamでも十分戦いやすいと考えています。今こそ国内の同人市場から世界市場に乗り出すチャンスではないでしょうか。
同人市場の強みを活かせる部分は多く、結果が比例するわけではありませんが、同人市場で売れた物はSteamでも結果を出しやすい状態です。
今後アダルト同人ソフトは、同人市場への逆輸入を視野に入れながらも主戦場はSteamに設定した戦い方が主流になっていくのではないでしょうか。現にSteamで全年齢版を発売し、同人市場でR18要素開放パッチや完全版を販売しているデベロッパーもおり、そうした方がトータルでの販売本数を伸ばせるようになると見ています。
現状展開しているタイトルが振るわず苦戦しているインディゲーム開発者は、今回紹介したポイントを押さえたタイトルを開発してみても良いと思います。
また同人ゲーム作家の方々は、自身が同人市場で発売したタイトルのSteam展開を検討してみてはいかがでしょうか。
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