他のインディ開発者に聞きたいことアンケート~第3回 結果終盤 上手く行った事例から学ぶ~

インディ開発者の声

2回に渡り「他のインディ開発者に聞きたいこと」をテーマに行った深堀りアンケートの回答のまとめを行っています。今回は、頂いたアンケートの中で上手く行ったと回答された内容をまとめ、なぜ上手く行ったのか大事なポイントを見ていきたいと思います。

前回の記事はコチラ↓


■上手く行った事例から学ぶ

上手く行ったと回答された方の深堀りアンケートの回答をまとめました。
生の声をお伝えするため、記載頂いた文章を出来る限りそのまま掲載しています。

① タイトルはどこで展開していますか?

ほとんどの方が、2プラットフォーム以上で展開していました。

② 企画はどうスタートしましたか?

・自由にゲームが作りたかったため、会社を辞めて、好きなゲームを作ることにしました。
・一番最初の企画は、習得したばかりのプログラミング言語を使って自前のWebアプリケーションでゲームを作ってみよう、から始めました。以後、新作を作り続ける事はほぼ当たり前となり、企画を出し続ける事がライフワークになっています。
・ずっと前に好きだったゲームに対する「ここをもっとこうしたらどうなるんだろう」みたいな好奇心などから発生します。
・ユーザに興味を持ってもらえそうなアイデアが浮かんだとき。
・フラストレーションがたまって自分の好みを形にしたくなったとき。
・書き溜めていたアイデアの中から、一番作りたいもの、作れそうなものをピックアップして、そこから膨らませました。

③ 使用したエンジンやツールを教えて下さい

・エンジン
 Unity
 Cocos2d-x
 WOLF RPGエディター
 UnrealEngine4
・言語
 C#、C++
・デザイン
 CLIP STADIO PAINT
 SubstanceDesigner/Painter
 MODO

④ 開発にかけた時間やコスト、それをどう捻出したか教えて下さい

・初期リリースまでは7ヶ月ほどです。それから1年半ほどかけて、アップデートや別プラットフォームへの移植などを行いました。開発資金は会社員時代の貯蓄を切り崩しました。
・仕事後の夜、土日祝。リリース直前は睡眠時間を削って捻出していましたが、あまりお勧めはできません。現在は専業の個人事業主です。
・お金は労働で貯めたケースと、フレンドファンディングで調達したケースがあります。フレンドファンディングはかなりプレッシャーがあります。時間は根性で捻出します。
・正確にはカウントしてませんが作品に応じて推定1000時間~3000時間。ゲーム開発で食べている自営業なので時間はあります。
・軌道に乗るまでは、約2年間早朝のパートが終わってから午後に制作。製作費は自費。今は専業で制作しています。

⑤ 外注は使用しましたか?どのくらいコストがかかりましたか?

・使用していません。
・ほとんど使用していませんでした。最近になって使い始めています。イラストなどを、1依頼につき数万程度。
・イラスト1枚に1~2万円払っていて、1タイトルに多くて200枚ぐらい使用します。音楽は1曲1~3万円ぐらい払っていて、1タイトルに多くて40曲ぐらい使用します。
・1作品につき平均数万円、0円の場合もあり。イラストの一部を外注するときは1作あたり+10~20万円。BGMなどをロイヤリティフリー素材にする場合は1作あたり+数万~10万円。
・ボイスや挿絵や翻訳など、30万円ほどかかりました。

⑥ プロモーションはどういった物を行いましたか?

・プロモーションは特に行っていません。
・Twitter、Google Adwords。最近はほぼ無使用です。
・自サイトで広告を載せてもほとんどダウンロードにつながらなかったのは印象的でした。PVが多くてもゲームと無関係のメディアでは効果がないようです。影響力のあるライターさんに気に入っていただいて、アプリゲットやファミ通に載ったのが全てでした。
・自サイト、SNSでの宣伝+パブリッシャー側のプロモーション。
・Twitterでの情報発信。ユーザー参加型イベントを開催

⑦ 上手く行った事、失敗、辛かった事、苦労した事を教えて下さい

・一人で作ったため作業量が多く、完成させるのが大変でした。
・上手く行った事:多言語対応したこと。結果として、プレイヤー数が国内の倍以上に増えた。また、海外コミュニティ内での"バズり"も経験した。(韓国)
失敗:アップデートに伴い、多くのユーザが正常にプレイできない状態に陥るトラブルを複数回経験した。個人でアップデートの頻度が多いタイトルをやると、テストフローに手間がかかり雑になってしまいがち。
辛かった事:新作を出した後、複数のトラブルが重なってユーザが急速に離れていった事。精神不調で休養を取ることになった。
苦労した事:1タイトル運営中にゲームサーバを3回も移行した。現在は1箇所で安定したが、そこに至るまでかなり大変だったし、今でも古いユーザさん相手には古いサーバのデータから探さないといけない。
・地のプログラミングスキルには自信がありますので、実装・開発はだいたいうまくいきます。
しかしプログラマーと企画・シナリオあたりを兼任すると工数が爆発して失敗しやすいことがわかりました。芸風を変えようとして失敗したこともあります。
・うまくいったこと:企画が遊び手の興味を引くことに成功して一定の人気を得られた。これをきっかけにパブリッシャから声をかけてもらい海外展開でき販路・収益が広がった。
失敗:値段を500円など安く付けすぎて開発維持費(生活費)が不足した。値段を変えても国内で売れる数は変わらなかった。
苦労したこと:収入が不安定なのでほとんどの場面で預金残高が減り続けるのを見ることが多く精神的に追い詰められやすい。
苦労したこと:大きめの初期投資がしにくいため必要経費の支払いを後払いにせざるを得ないことが多く、先方との契約内容が不利になることが多い。
・辛かったこと:1人で制作しているので、今自分が作っているゲームが、果たして世間に受け入れてもらえるのか、本当に面白いものなのか、不安がありました。そこからくるモチベーションの維持も大変でした。
上手くいったこと:リリースすると面白いと受け入れてもらい、一定数のファンも得られたことはとても良かったです。
失敗したこと:リリース直後、バグフィックスが不十分で進行不能のバグの修正に追われたことは失敗でした。早速レビューに低評価がついてしまい、酷評されてしまいました。

⑧ 発売した結果を教えて下さい。本数や損益はどれくらいでしたか?

・iOS 15万DL、Android 100万DL、Steam 2500DLほどです。トータルの利益は1500万円ほどになります。
・1000万強/年の利益を数年に渡って維持。
・20万DLぐらいで500万円ぐらい売れました。
・10万本以上。1人で数年以上暮らしていける利益が出た。
・Steamでの売り上げ本数が4万5千本、SwitchとPS4の売り上げ本数は把握していないですが、合わせて、2千5百万円ほどでした。

⑨ 今後に向けて改善するつもりであることを教えて下さい

・技術力(特に絵作りに関して)の向上が当面の目標です。
・ワークフロー。個人であっても整備すべき。
・売れる確度が高そうな物を売れやすい方法で、ということで、過去のヒット作をSwitch向けにリメイクしています。
・販売単価をある程度引き上げる。海外展開できない場合どうしても売上げ本数が落ちるので、それが難しそう/あるいは海外展開の効果が低そうなゲームを作る場合はR18方面への転向も視野に入れる。
・作品のクオリティの向上。

⑩ インディゲーム開発の魅力を教えて下さい

・自分の作りたいものを好きなように作れるのが魅力だと思います。
・一昔前に比べれば格段に始めやすい環境が整っています。利害関係者が少なく、しがらみに縛られにくいです。誇張抜きで誰とも会わずに/話さずに生活できます。
・シナリオやUIデザインで、もしゲーム会社で働いていたら上司に却下されるような思い切ったことができるのが魅力です。
・自分の想像を形にした後の、悪い方向でもいい方向でも発生するギャップを楽しめること。そこから遊び手に受け入れてもらえるための試行錯誤を楽しめること。
・自分の作りたいものを、作りたいように作れること。

⑪ 最終的な目標を教えて下さい

GOTYを受賞するのが目標です。
・今よりも良い作品を、続けられる限り作り続けるつもりで、明確なゴールはないです。
・専業のゲーム開発者になって、10人程度のスタジオを作って活動したいです。
・ゲーム作りを上達させること。
・自分が楽しいと思えるゲームをもっと作って、もっと沢山の人に楽しんでもらうこと。

■追加インタビュー

上記のアンケートの後、回答頂いた開発者の方に追加インタビューを行い、更に深く作品作りについてお聞きしました。貴重な声を頂き、誠にありがとうございます!

・なぜ作品が売れたと思いますか?意識した点を教えてください

一つでもはっきりプロ作品を上回る要素を入れるように心がけました。

・作品をどの段階で完成としましたか?

投下した作業時間に対するクオリティの上昇が頭打ちになり、コスパが非常に悪くなった段階で完成としました。

・リリース時の手応えはどうでしたか?他作品と違う点はありましたか?

好評にせよ不評にせよ、強く感情的な反応がありました。

・どうゲームの値段を決めましたか?
 販売してみて適正な値段だと思いましたか?

適当に決めました。適正な値段とは思えないです。

・日々どうモチベーションを保ちましたか?

生来とこれまでの人生経験から根性があるほうなので苦しくてもやめないです。

・今後パブリッシャーを見つけたいと思いますか?
 パブリッシャーに期待することはありますか?

あるかもしれません。
今回、自社でパブリッシャーとして開発者本人が任天堂の諸手続きをしているのですが、非常に時間と注意力と集中力を取られます。
その時間を作品のクオリティアップに使えるなら、パブリッシャーにマージンを支払っても割に合う見込みはありますね。

期待することは、開発者が作品そのものに時間を使える時間を増やすことが全てかと思います。

■まとめ/大事なポイント

今回は、アンケートで上手く行ったと回答された方の回答を見ていきました。
決して狙ってヒットを作れるわけではないですが、いくつか大事なキーワードが出てきました。
最後にそれをまとめていきます。

・どこか1つでも尖った物を作る

ここは、インディゲームで最も大事なポイントだと我々は考えています。
どこで勝負をするのか?そこを明確にし、1つでもこれまでのゲームに無かった要素を盛り込む。
その尖りを見て、実況者やライターが取り上げたいと思える物にすることが理想的です。

・多言語化、多プラットフォーム展開で市場を増やす

多言語化を行い、日本国内以外でも売れる物にする。多プラットフォームで展開して、ゲーミングPCを持っていない人など多くの人が遊べる環境を用意する。
これを行うことで市場が増え、バズる機会、売れる機会が一気に増えます
小さい市場ではなく、出来るだけ幅広多くの人に遊んでもらうチャンスを作りたいです。

・パブリッシャーに声をかけてもらう

プロモーションやリリースに関わる物事は、開発者が全て行うとかなりの労力になります。
パブリッシャーに動いてもらうことで多言語化や多プラットフォーム化も行いやすくなり、個人では行いづらい大きなプロモーションも行ってもらえるチャンスが増えます。
そのためには、リリース前から自身のタイトルをプレスリリースやイベントへの参加などでアピールして、パブリッシャーから声をかけてもらう機会を増やすことが理想的です。
 

過去に『「世界で100万本売る」ことは可能か?』という記事でも同様のことについてお話させて頂いています。今回の記事と合わせてご活用ください。


以上で、「他のインディ開発者に聞きたいこと」をテーマに行った深堀りアンケートのまとめ記事は終了となります。
改めて、アンケートやインタビューにご回答頂いた開発者の皆様、誠にありがとうございました!

今後もインディ開発者の役に立つ情報をお伝えしていきますので、何卒宜しくお願い致します!

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